創業してから44年になる大変実績が豊富な飯田橋事務所。得意分野・専門分野を持った社会保険労務士有資格者と専門スタッフが質の高いサービスを提供しています。今日は代表の鈴木幹男先生に事務所の特徴や今後についてなどインタビューさせていただいた。
セミナー実績多数
先生が社会保険労務士になったきっかけは?
中学校を卒業後、オートバイ製造会社に就職したのですが、3年後にこの会社は倒産してしまいました。初めての失業で、職業安定所通いの経験をしました。その後、農業、レストラン、新聞配達、印刷会社、高校の講師、会計事務所、衣料品販売店など20ほどの職業を経験しました。当時の労働省の外郭団体に勤務していたときに、社会保険労務士という資格を知り受験してみることにしました。私のそれまでの職業経験が重なって、この資格に親しみを感じ、天職になるかもしれないと思っていました。その後、無事に試験に合格し、32歳で開業しました。
社会保険労務士法人飯田橋事務所の特徴って?
当事務所は、2021年3月で創業44年になりました。この間、労働諸法令・社会保険諸法令の手続きから給与計算や人事労務管理、労働法令に関する相談、アドバイスや人事諸規定の作成、人事制度の構築、社員、管理者の教育など、中小企業の人事・労務分野の課題解決を支援してきました。
当事務所の職員は、社会保険労務士有資格者23名と、得意分野、専門分野を持ったベテラン職員で構成しています。650社ほどの顧客事業所を継続的に支援し、豊富な経験、事例、ノウハウを日々積み上げています。
メンバー6名程度からなる5つのグループを基幹組織として、個々の顧客事業所の支援は主担当、サブ担当による共同管理、人事制度や労務管理、社員教育などの依頼が発生した場合は専門家を加えた複数担当制で対応しています。業務の支援や改善、情報インフラの管理などは、課題別にチームを編成しています。
当事務所は、社会保険労務士業界の新しい時代を展望し、2018年から2020年にかけて、手続き、給与計算業務の基幹システムを、クラウド型の新システムに全面移行し、ZOOMやチャットワークの導入、職員一人に一台ノートPC、スマホの貸与を行いました。これらの対策により、コロナによる在宅勤務中でも事務所と同じ環境で業務を行うことができています。さらに、2006年は社会保険労務士業界ではいち早くPマークを取得し、個人情報保護体制を強化しました。また、2016年のマイナンバー法の施行に対応し、セキュリティー環境に優れた現オフィスへの移転や、強力なセキュリティーソフトの導入など、この分野を特に強化してきました。
当事務所は、2012年から、人事・労務の無料相談会を毎週開催し、沢山の相談者を集め喜んでいただけています。2016年からは、人事・労務分野のセミナーを毎月1回程度開催しています。顧客事業所には、人事・労務情報を創業以来発行し、現在は毎月3回発行、配信したり、職員が交代で執筆した人事労務分野のブログをこまめに配信したりなど活発な情報発信を行っています。
今後の社会保険労務士業界について教えてください。
社会保険労務士業界は約50年の歴史があります。この50年の歴史の中で、ここ数年で始まった変化、そして、今後5年くらいで起こる変化は過去の40数年変化を超えるのではとこの仕事をやっている人たちは感じていると思います。
今後の変化としては大きく分けて3つあります。
1つ目は、IT技術の進化です。クラウドシステムによるIT化という大きな波が急速に人事労務経理などの分野にも及んできています。手続きでは電子申請が中心となり、これまで手作業で書類を作って提出していたものがシステムを使って簡単にできるようになりました。給与計算も簡単にシステムが計算してくれます。そういった技術革新による変化がこの1、2年で押し寄せてきています。
2つ目は、国の政策で、電子政府に関する方針が、2、3年前に安倍政権のもとで出されました。中小企業の負担をなくすために、国の行政手続をすべて電子化して、税理士や社会保険労務士などの仲介をなくし、直接電子データをマイナンバーを介して国とつなぎ、行政がその結果を受けて処理をしていこうという動きが去年あたりから出ています。マイナンバーカードを普及するためにマイナンバーカードが健康保険証として使えたり、運転免許証と一体化するなど色々と強力な政策も進んでいます。そういった国の政策により社会保険労務士の業務の中で今まで柱だった書類の作成、提出といった業務に影響が出てくると思います。
3つ目は、労働環境が複雑になってきていることです。働く人の労働環境をもっと前時代的なものから近代的なものに変えていかなければなりません。労働者の権利意識というものがどんどん変化してきています。それを受けて、働き方改革のもと、いろいろな労働法令が改訂されて、新たな法律もできたりしているのですが、「あれを変えないといけない」「これも変えないといけない」といったようにその運用が中小企業ではなかなか難しくなってきています。中小企業は社内に人事部や総務部を置けないところも多いので、経営者の悩みが深刻化してきています。
この3つの大きな変化がここ数年で出てきていているのですが、これからもますます進んでいくと思っています。
この3つの変化は社会保険労務士という職業にとっては、マイナス面もありますが、大きなプラス面もあります。社会保険労務士業務は主に「書類の作成、提出代行」と「給与計算」と中小企業の人事労務に関する様々な悩み事、トラブル、労働法令の解釈、運用をする「労務相談」と中小企業の職場作りをする上で必要な「人事の評価制度、賃金制度、社員教育」の4つの枠組みがあります。
その中で、「書類の作成」などの手続き業務や「給与計算」は環境変化により比率が下がっていきます。ただ、比率は下がりますが、考えによってはそこに割いていた労働時間を残りの2つの枠に割くことができるようになります。「労務相談」や「人事の評価制度」などは、むしろものすごく必要性、ニーズが高まっている現状があるので、今までなかなか時間が割けず手掛け辛かった労務のコンサル業務などに力を入れて、サービスを作り出し、売り上げを作っていくスタイルでやっている事務所が徐々に出てきています。
この環境の変化を上手に受けとめて、それを追い風にすることができた事務所は大きく飛躍できる可能性を持っています。かたやなにもしないで、時の流れに身をまかせている事務所は衰退していく、そういった業界の二極分化が結果として生まれると思っています。
社会保険労務士という資格制度が50年前にできたときにはすでに今の時代を想定していたのではと感じています。そもそも手続きや書類作成の代行屋さんを想定して社会保険労務士の資格を作ったのではありません。最初は労務管理士と呼んでいたように、中小企業の労務管理の支援、アドバイスをすることが仕事の中心でした。ところが手続き代行や給与計算などの業務で十分ご飯を食べていくことができたので、いつのまにか仮の仕事で40数年の時が流れました。大きな世の中の環境変化の中で、いよいよこの社会保険労務士という資格ができたそもそもの役割、必要性が求められています。社会保険労務士はアウトソーシング代行会社ではないですからね。もっと中小企業に大きな、決定的な役割を及ぼす人事労務管理、中小企業の職場作り、そういうものに深く関わっていく役割が注目されてきています。
今後の飯田橋事務所の展望を教えてください。
当事務所の当面の重点課題は以下の5点になります。
(1)一人親方による顧客支援から組織的な顧客支援に転換する。
①事業所に基幹組織であるグループを強化
②主担当、サブ担当による共同管理を強化
③専門コンサルを加えて複数担当制を強化
④情報インフラなど業務の各種支援チームを強化
(2)職員の専門分野を強化し、事務所の新しい提供サービスを開発する。
①就業規則の診断
②評価制度の導入・運用支援
③ハラスメント相談窓口、教育
④HRテック支援サービス
⑤労務監査/労働診断
(3)業界を取り巻く環境に相応しい業務の生産性向上を実現する。
社会保険労務士を取り巻く環境が大きく変化しています。特に、これまで中心業務だった手続きや給与計算業務の簡略化が急速に進み、業務の生産性を上げることの重要性が格段に増しています。それは、これからの時代に有効な新しいサービスを開発する時間を確保することでもあります。そのための取り組みとして、これまでに導入済みの情報通信機器やRPAの活用度を高めることや、クラウドアプリ作成機能を持ったKintone導入の検討なども進めています。
(4)職員一人ひとりと事務所を挑戦する組織に変革すること。
挑戦する組織に変革できなければ、これだけ変化の激しい時代に対応できません。一人ひとりの職員が変化に向き合って挑戦していくことが重要です。ただ、何人かの職員だけが挑戦意欲を高く持ったとしても組織が旧態依然のやり方をしていたらうまくかみ合いません。職員一人ひとりと事務所を挑戦する組織に変革していきたいと思います。
(5)職員が定着し、成長していく職場づくりを実現すること。
中小企業で働く社員がその職場に定着し、仕事力を高めて成長することで業績につながります。それが労働環境の改善にもつながります。そういった良い循環になるように色々と支援しているのが社会保険労務士ですが、そのためには当事務所が実践できていなければ誰も信じてくれないと思います。なので、お客様の模範になるような事務所作りをしていきたいと思います。