困っている人の気持ちを代弁したいという思いで日々業務にあたっている髙井先生。ご相談者の気持ちを汲み取り、これまでの経験を基に状況に沿ったアドバイスをされています。そんな先生に事務所の特徴や今後についてなどインタビューさせていただいた。
所属弁護士会:神奈川県弁護士会
先生が弁護士を志した理由は?
小学生の頃は勉強が好きではなかったため得意な方ではなく、体も小さく運動も苦手で、どちらかというと助けられる側の人間でした。ところが、中学生になって英語の授業が始まったので、塾に通うことにしました。塾に通って勉強しているうちに、英語が得意になり、得意になると人に聞かれて頼られるようになりました。頼られるようになり、意外と人のために何かをすることは自分に合っているのではと思うようになりました。自分のために何かをしたい、努力をしようとはあまり思わなかったのですが、人のためと考えると一生懸命頑張ることができたからです。
また、小さい頃家族内で、私の意見が否定されることが多々ありました。私は自分の意見が少なくとも他の家族の意見よりも正しいという自信があったため、なぜ自分が正しいことを言っているのに否定されているのだろう、私が年少者で、他の家族と意見を異にするというだけで否定されるのはおかしいと感じていました。その過程で、少数意見だから間違っているとか、他と違うからいけないという不合理な考え方への反発心みたいなものが芽生え、その経験から少数意見であっても正しいことを正しいと言える、その人が苦しんでいるのであればたとえ他人から見れば些細な事であったとしても代弁する人が必要なのではと思うようになりました。そういった人の気持ちを代弁できる仕事は弁護士だと思い、また人のために働くということも自分に合っていると考え、目指すことにしました。
横浜弁天通法律事務所の特徴って?
弁護士になったきっかけが困っている人の気持ちを代弁したいということだったので、交通事故、離婚、男女トラブル、相続、刑事事件、少年事件など個人の方の身の回りで起きる事件を多く扱っています。
弁護士になる人は基本的にはずっと優秀で、エリートコースを歩んできた人が多いと思います。ただ、困っている人の気持ちは似た経験を持っている人にしか分からないこともあると思います。なので、弁護士を目指した頃の気持ちを忘れず、困っている人の気持ちに寄り添って解決していくことを心がけています。
そのため、相談に来られた方には、よく話を聞くことを心がけています。最初からすべてを伝えられる人はいないと思いますので、その背景に隠れる気持ちをなるべく汲み取れるようしっかりとお話を聞かせていただき、信頼関係を築けるようにしています。「自分の言っていることが正しいです」「言うことを聞いていれば大丈夫です」ではなくて、まずその人の気持ちを聞いて、この事件に関して一番言いたいことは何かなというのをまず捉えることを心がけています。
その上で、法律上の解決方法は複数あることが多いため、その中でどのような解決を求めているのか、どのような解決が相談者のその後の人生を考えたうえで適切なのかということを話し合うようにしています。例えば、離婚問題では、親権、子どもの面会交流、財産分与の請求、養育費、慰謝料請求等について相談者の気持ちやその後の人生も考えて、請求内容を話し合います。離婚の場合は、特に、相談者だけではなく子どものその後も考えて話し合います。相談者の中には、離婚後の子との関係をどう構築していくのかが良いか、離婚に関して子どもの負担にならないようにどのタイミングでどのように子どもに説明するのかが良いかなど、実際には法律における裁判や調停とは関係のない部分について不安を持っている方もおられます。そういう悩みに対しても、裁判や調停に関係ないから聞かないということではなく、その人の気持ちを汲み取りつつ、これまでの経験を基に状況に沿った適切なアドバイスをするようにしています。
以前勤めていた事務所では病院の顧問もやっていたので、医療事件を多く扱っていました。交通事故で人身損害を請求する時は、カルテや診断書などの医学的な面が問題になってきます。交通事件と医療事件を10年以上やってきたので、医学的な問題も踏まえた上で、アドバイスできますし、医学的な争点にもひるむことはありません。相手方が医師の意見書を出してきたとしても、医療事件で多数の医師の考え方や医師作成の意見書に触れてきた経験から、医師がどういう立場で、どういう考えで意見書を作成したかを的確に把握できるので、その信ぴょう性や反論すべきポイントを的確に捉えられます。
また、当事務所の入っているビルには、税理士さん、司法書士さん、不動産鑑定士さんもおられ、日ごろから懇意にさせていただいているので、相続や家族信託、後見業務について、他士業と連携をとりながら進められるのは当事務所の強みの1つです。
今後の弁護士業界とその中での先生の展望について教えてください。
今はどの業界もAIの問題があって、法律の分野でも契約書のチェックもAIができるような時代になってきています。アメリカでは、簡単な交通事件に関しては、AI弁護士が対応していると聞きます。
データを集めて高確率で今後起きることを予測して、紛争を予防する契約書の作成等に関しては、AIの方が数段上だと感じています。ただ、人の気持ちを理解することは簡単にはできません。多数の人が思っていることを、その人も同じように思っているとは限りません。人の感じ方は千差万別です。だからこそその人の気持ちを汲み取り、その人の気持ちに沿った法的サービスを提供することが今後1番重要になってくるのではと思っています。
最近では、離婚して養育費が支払われないことが原因で、子供の貧困が問題になってきています。養育費に関して見直すという動きが出て、新基準が発表されたのですが、その発表される前から私は裁判所に対して、今の養育費の基準だと貧困が社会問題になっていて、それがいじめにつながり、犯罪につながり、犯罪者、犯罪にあった方の家族が苦しむという負の連鎖が生じている、もう少し違う基準でやってほしいと切に訴えていました。当初はあまり理解されませんでしたが、訴え続けることで調停委員や裁判官も動いてくれるようになりました。
困っている人の方の思いを代弁して、紛争を解決していくことはこれからも変わりませんが、今後はもう少し大きい視点で社会問題の解決のための取り組みもできればと思っています。